大恭建興

大切なのは断熱性能だけじゃない

2023.02.20 / 家づくり

今月は完成見学会ラッシュ。

昨日一昨日は“南町の家”、

今週末も “上除の家” で住んでる家の見学会を予定しております。

たくさんの方々に御来場頂き、家づくりについての御相談を頂いているなかで、

ちょっと気が付いた事があるので、ブログに書いてみます。

・・・

昨今、住宅の高断熱化が加速度的に進んできているのは、

一般の方々も何となくご存知かと思います。

国の方でも省エネ基準に断熱等級6~7が設定され、

HEAT20 G2~G3クラスの高断熱仕様が業界内外問わず、広く認知されてきました。

また、SNSや建築系ユーチューバーによる情報発信は強力なモノがあり、

見学会に御来場頂く方々からも

「断熱はG2(G3)グレードを希望します!」 

というような御要望を頂く事が増えてきました。

これは喜ばしい事ですね。日本の住宅性能の底上げがなされいてる感じがします。

・・・

で、本質的に大切なのはそこから先で、

断熱グレードを高くすると、どういうメリットがあるのかという話。

高断熱住宅に期待される事と言えば、、、

・屋内の温度差が無くなり、家中が冬暖かく夏涼しくなる

・暖冷房費用(エネルギー)が抑えられる

と言ったところでしょう。

特に後者に関して、エネルギー高騰の時代ですから皆さん関心があるところと思いますが、

これについては断熱性能だけじゃない大切な要素がありまして、

それは “日射取得” と呼ばれるモノであります。

真冬に窓から入る日射熱で屋内が暖かくなり、

暖房器具の負担が減り、

経済的に暖房が出来る、と。

そう、パッシブデザインですね。

モデルプランで暖冷房費用をシミュレーションしてみたいと思います。

立地は長岡市(5地域)、

ワンフロアの床面積が15坪、1F2F併せて30坪の核家族向けのよくあるボリュームの家を想定、

片方は南側に大窓を並べ、もう片方は北型に大窓を並べたプラン。

断熱はほぼダイキョー標準仕様で、窓はAPW430。

一応、夏季の日射遮蔽のために大窓に庇を付けておきましょう。

南向きプランはたっぷりと冬季日射が得られるのに対して、

北向きプランはほとんど冬季日射が得られない。

断熱性能は全く同じで、窓が北か南かの違いだけ。

Q-pexで暖房費用を計算してみると、、、

南向きプランの暖房費用は1.93万円。エアコン暖房(COP3.0)想定です。

北向きプランの暖房費用は2.8万円。その差0.87万円。

北向きプランは南向きプランの1.45倍の暖房費用がかかっているという事なります。

どちらも同じG3グレード(Ua=0.23W/㎡・k)ですが、

窓の配置でこれだけ暖房費用に差が出てくるんですね。

つまり、断熱性能だけじゃなくて、窓の設計ってとても大切という話。

新潟は冬の晴れ間が少ないので、太平洋側と比べると冬季日射取得は不利なんですが、

それでもこのくらいの差が出ると。

皆様には、ぜひこれを知っておいて頂きたい。

・・・

蛇足ですが、参考までに。

同じ建物を福島へ持っていくと、どのような数値になるか?

長岡市と同程度の寒さだけど、冬季日射量が多い、小名浜を想定してシミュレーションしてみます。

すると、、、

南向きプランの外皮性能をUa値0.34(G2グレード)まで落としても、

北向きプランのUa値0.23(G3グレード)よりも暖房費用がかからないという結果に。

G2がG3に勝利してしまいました。

南向きプラン + G2グレード の暖房費用が1.36万円に対して、

北向きプラン + G3グレード の暖房費用が1.68万円となる。

全窓が北or南という極端な比較ですが、窓設計の重要性がよく分かるかと思います。

最終的に何が言いたいのかと言うと・・・

“断熱性能” というのは暖冷房費用を抑えるための手段の一つでしかなく、

日射取得等、他にも大切な要素が色々とあるよ!

という事。言いたいことは以上です。

小幡 大樹

小幡 大樹

専務取締役・一級建築士

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